火災の特徴と対策

 可燃物と酸素に火源が作用すると火災が発生する。発生した火災は加速度的に拡大し避難を困難とする。可燃物と火源の管理による発生抑止、建物構造の備えと消火活動による延焼抑止で危険性を低減することが重要である。


火災とは

 可燃物と酸素があるところに熱が一定の条件で作用すると、燃焼現象が始まり連鎖反応的に燃焼を継続する(図1参照)。この燃焼現象の発生によって財産や人命が脅かされる場合、この燃焼現象のことを火災という。

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  図1 燃焼の3要素と消火の原理(モリタ宮田工業ホームページ掲載の図に加筆)
    https://www.moritamiyata.com/about_extinguisher/knowledge/shokaki01.html

 

火災発生のメカニズム

 人の生活環境や生産現場となる家屋や施設、交通手段となる車両等には内装材や収納物などの可燃物があり、コンロや電気器具など熱源となるものも設置されている。コンロをつけたままその場を離れるなどの人為的なミスや機器の劣化等によって周辺の可燃物が過熱し一定の温度になると出火する等、普段の生活・生産の中で火災が発生している。地震時には、地震動によって電気設備の配線が破断・短絡し火花が出て周辺の可燃物に着火する等、様々な原因によって出火することがある。
 森林や野原などの林野では、草木が可燃物となり、自然現象である雷放電や立ち入る人間の火の不始末による残り火などが熱源となって出火する。

火災の拡大と消火

 火災は、炎が出てから周囲の可燃物に燃え広がる。燃え広がる面積は、火災発生からの時間の二乗に比例して大きくなるので、発生する熱量(発熱量)は加速度的に増え、温度も次第に急上昇する。
 火災を消すためには、燃焼の要素である可燃物、酸素、熱が連鎖反応を起こさないようにする。代表的な消火方法は水で火災の温度を下げ、熱を取り去ることである(図1参照))。必要な水量は発熱量に比例するので、火災発生からの時間の二乗に概ね比例すると考えられる。火元近くだけが燃焼している初期火災の場合は、水道栓につないだホース程度の水の勢いで消火できるが、もう少し時間がたって1つの部屋全体が燃焼するような盛期状況となった火災では、消防隊の強力な消防ポンプによって大量の水を注水しなければ消火できない。

隣棟延焼から市街地への延焼拡大とその防止

 家屋から出火して盛期火災となると、燃焼している部屋の窓や燃え抜けた屋根から火炎が噴出し、火の粉が上昇気流に乗って飛散する(飛び火)。噴出火炎からは、熱放射により、隣の建物の外装材等の可燃物の温度が上昇する。火炎が大きいほど、また、隣棟までの距離が短いほど受熱量は大きくなり、可燃物の温度が上昇して着火し、隣棟延焼となる。飛び火は着地した場所に可燃物があるとそこから出火する。
 隣棟延焼を防ぐには、受熱している可燃物にホースで放水し、可燃物の温度を下げて着火しないようにする。木造住宅が密集した地域では隣棟までの距離が短く、容易に延焼して被害を拡大するので、可能なかぎりの台数の消防車を出動させて何本ものホースから大量放水し、隣棟延焼を食い止める努力がなされる。また、火の粉についての警戒も重要である。
 地震時には火災が同時多発するので、消防署が保有する消防車の台数ではすべての火災に対応することができず、放任火災からの隣棟延焼が市街地火災を引き起こす危険性がある。そこで、地域によっては市民が使う可搬式消火ポンプや消火用水を準備して地震時の火災発生に備えている。

林野火災から家屋等への延焼とその防止

 林野火災が発生した場合、対応が遅れると飛び火により延焼する範囲が広がり、森林資源を大量に消失するばかりでなく、家屋が立地する住宅地に迫って被害が及ぶことがある。近年ではこのような場合に備えて公的に配備されたヘリコプターを活用し、林野火災の延焼状況を把握し、空中消火を積極的に行うようになっている。

火災からの避難

 火災が拡大すると、人は火炎や煙からの熱や煙粒子の影響を受けて避難せざるを得なくなる。人のいる空間に濃煙が充満すると視界が遮られ安全な避難方向を見いだせなくなる。同時多発火災や飛び火によって延焼拡大する場合、驚異的な現象となる火災旋風が発生しやすくなり、また、複数の火流に取り囲まれることにもなる。火煙に追い詰められた状況で多数の人が避難すると、狭い出口や通路に人が集中して群集災害の危険も生じる。
 このように状況が切迫した状況での避難は生命の危険を引き起こすので、火災が大きくなる前に避難を開始して安全な場所へ避難することが望ましい。そのため火災が拡がる方向や速度の予測に基づいて、タイミングを失することなく避難誘導することが重要である。

火災危険性への備え

 火災が拡がる速度は、可燃物の状況や家屋の構造に左右される。家屋の内装材、特に壁材や天井材が燃えやすい場合、火災は一気に部屋全体に拡がりやすくなり避難危険が高くなるが、壁や天井を不燃化すると避難可能な時間が延長され避難しやすくなる。スプリンクラー等の自動消火設備を設置すると、火災が大きく拡大する前に消火されるので、避難が困難な在館者が多い場合は有効である。
 火災時の人命危険性を高めてしまう市街地火災を防ぐには、隣棟への延焼を防ぐことが第一に重要となる。消火活動で延焼を防ぐ努力がなされるが、隣棟へ延焼しにくい建物構造としておくことで消火活動の有効性を高めることができる。また、屋根を不燃化することにより飛び火による延焼拡大を防ぐことができる。