論考

鹿児島県太陽光発電所内電力貯蔵施設消防職員受傷の教訓

令和6年3月27日鹿児島県の太陽光発電所内電力貯蔵施設から発煙し、消防職員4名が受傷した。発煙から発火、爆発の経緯は地元テレビ局取材画像に残されている。防火衣と呼吸器を装着した6名と通常の活動服の4名が施設ドア付近で活動している様子が記録されている。ドアが開くと濃い白煙が周囲を覆い、消防職員の姿はわからなくなる。その後、発火し、爆発が複数回起きている。その後、防火衣とボンベを背負い、ヘルメットと面体が脱落した消防職員1名が救助されている1)。 

これまでにも中国北京市の電力貯蔵設備火災に対応した消防職員2名が殉職2)、米国アリゾナ州の電力貯蔵設備発煙に対応中の消防職員4名が受傷している3)。電力貯蔵設備の発煙や火災では、異常が発生してからしばらくして爆発が起きている。消防職員が通報を受けて、現地に到着、状況を調査中に爆発となっている。そのため爆風や火炎により受傷する結果となっている。 

この教訓から電力貯蔵設備の安全設備が充実するまでの期間、消防職員は電力貯蔵設備内で爆発が起きる前提で活動を行う必要がある。立ち入り制限区域を設け、消防職員が立ち入る場合には、現場指揮所で統制を行い、防火衣と呼吸器を装着させ、爆発発生時には迅速に避難支援できるよう同様装備を装着した職員を複数待機させる必要がある4)。 

リチウムイオン電池の火災を消火するためには、電池を水没させる必要がある。太陽光発電所の電力貯蔵の場合、現実的には消火不可能である。周囲への延焼を防止しながら今回のように燃え尽きさせる制御焼却となる。もし、未反応のリチウムイオン電池が残存した場合には、再燃の可能性がある。再燃は複数回起きることがあり、再燃までに一週間程度の事例もあるため、警戒を怠ってはならない。 

発災した施設に関する資料「平成26年度補正予算再生可能エネルギー接続保留緊急対応補助金(再生可能エネルギー発電事業者のための蓄電システム導入支援事業)事 業 報 告5)」を見ると類似設備が6件存在する。

 管内に類似設備が立地する消防は、この教訓を活かしてもらいたい。 

日本火災学会会長 鶴田 俊

令和6年3月30日

PDF版はここから

 


過去の記事のPDF