2025年11月 佐賀関の大規模火災の現地調査(速報)
2025年11月18日17時40分頃に大分県大分市佐賀関で発生した大規模な市街地火災(以下,本火災)は,総務省消防庁の発表1)によれば焼失棟数187棟,焼失面積48,900平米(調査中,なお林野被害は調査中)という甚大な被害となりました(2025年12月25日現在).この火災については,消防研究センターや国土技術政策総合研究所および建築研究所が精力的な現地調査を行っておりますが2),日本火災学会・地震火災専門委員会(主査:北後明彦神戸大名誉教授)においても,この火災をうけて11月23日および12月15日と16日に,現地調査を行っています.特に12月15日,16日にはドローンを用いて焼失地域を上空から網羅的に調査することで,従来の地上からの目視による調査ではわかりにくい,上階部分の延焼や火害,あるいは隣接林野の延焼などが明らかになりました.作成された火災現場周辺の航空写真が下記となります.詳しい原因は今後の調査によって明らかにされていくことも踏まえて,本稿では今回行った2回の調査から判明した火災拡大の要因についての詳細を記述します.
写真 佐賀関大規模火災現場の航空写真(2025年12月15日撮影)
調査で判明したこと① 強風とそれに伴う飛び火
本火災における拡大要因のひとつに強風があります.写真からもお分かりのように,焼失地域は山と海に囲まれた市街地でした.そして現段階では詳細な風向や風速の数値が明らかにはなっていませんが,火災当時は風向が変化しながらも,強い北西の風が南東方向へと吹いていたとのことです.過去の例を紐解くまでもなく,一般的に強風時は市街地延焼が拡大しやすく,火災が大規模になりやすいことが知られていますが,今回の火災においてもこのような強風という環境条件が火災拡大の主要因であると考えられます.ところで,特に強風時に気を付けたいのが飛び火現象です.飛び火現象による火災の拡大は,糸魚川市大規模火災,輪島市大規模火災,大船渡市林野火災など近年の大規模火災いずれにおいても見られ,今回も約1.4km離れた南東の鳶島(地図の右下方向,風下)において本火災による飛び火から林野が延焼しました.市街地においてもこの飛び火は延焼を拡大させました.特に写真上の南側および北側は,市街地や道路を経て離散的に延焼が拡大している様子が見て取れますが(代表的な部分は写真赤丸など),これは飛び火による延焼と考えられます.飛び火に対応する活動は一般に飛び火警戒活動と呼ばれますが,昨年に発生した大船渡市林野火災をうけて,総務省消防庁は飛び火警戒要領の見直し等を行う際の留意事項等をとりまとめております.筆者(廣井)はこの見直しに意見聴取会の委員として関わりましたが,図のように住民が果たす役割も少なくないように感じています.興味のある方はご確認ください3).
図 消防機関と地域住⺠等が連携した⾶び⽕警戒体制の例(総務省消防庁より引用3))
調査で判明したこと② 木造密集市街地という地域特性
次の要因が市街地特性です.焼失地域のドローン映像からは木造建物が燃え落ちている痕跡が数多く散見されますが,これはこの地域が所狭しと木造建築物が建て詰まった密集市街地であることを示します.一般に木造建物の割合が高いほど,また建物の密度が高いほど,市街地延焼は拡大しやすくなることが知られています.また,写真からは焼失地域における空地の割合や道路幅なども類推できますが,空地の数が多いほど,また道路幅が広ければ広いほど,接炎や輻射熱の影響で延焼しにくくなるだけではなく,ポンプ車の侵入や放水が容易となって火災が拡大しにくくなります.このため,木造密集市街地で空地も少なく,道路幅も狭かったという地域特性が延焼の拡大に影響したことが本火災では言えそうです.なお,現地で空き家が多かったことが延焼拡大の要因になっているかどうかについては,住民が少ないことにより火災に対応できる人数が少なかったということはあるのでしょうが,空き家の存在自体が延焼拡大に大きく影響したかどうかは分かりません.
さて一方で,火災による延焼が止まった場所は「焼け止まり箇所」と呼ばれ,この部分の調査や分析をすることで,安全な都市づくりに関するヒントを得ることができます(1).本火災の焼け止まりは大きく分けて,南部,南東部,北部,西部の4カ所が挙げられますが,主な理由としては,耐火・防火性能の高い建物,延焼を遮断する道路幅,消防の懸命な消火活動,そして北部や西部は風向がその理由として挙げられます.これほどの大規模火災になりますと,上記に示した理由の1つだけで延焼を止めることはできず、複数の理由が積み重なってはじめて火災の延焼阻止に至るものと考えられます.それゆえ,今後の市街地火災対策としてハード対策やソフト対策一辺倒ではない,ハードとソフトを組み合わせた総合的な対策が求められるでしょう.
おわりに
本稿では,大分県大分市佐賀関で発生した大規模な市街地火災に関する,日本火災学会による調査概要をまとめました.ここでは速報性を優先して佐賀関における大規模火災を考察したものであり,現時点での推測も含んだ文章です.したがって今後の調査結果次第で,記述が変わることもある点をご承知ください.しかしながら,大規模火災による焼失した市街地をドローンによって調査する試みは,日本火災学会が2024年に能登半島地震時の輪島市河井町で行った調査5)に次ぐもので,調査手法としての有効性が示唆されたと考えております.近年大規模な火災が頻発していますように,まだまだわが国では大規模な市街地火災の発生リスクは低くありません.読者の皆さんも,できる限りの備えをしていただければ幸いです.今回の火災被害にあわれた方々には、改めて心よりお見舞いを申し上げます。
文責:東京大学:ピニェイロ アベウ タイチ コンノ助教,廣井悠教授
注釈
(1) 例えば筆者らは,能登半島地震時に廣井ら(2024)3)のように焼け止まりを詳しく調査しています.
1) 総務省消防庁:令和7年11月18日に大分県大分市において発生した火災の概要及び消防庁長官による火災調査の速報,2025,https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-186/01/shiryou1.pdf
2) 総務省消防庁:大分市大規模火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会,2025,https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/post-186.html
3) 総務省消防庁:飛び火警戒要領の見直し等について(通知),2024,https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/20251029_tobihi.pdf
4) 廣井悠,北後明彦,大津暢人,村田明子,山下平祐,花井英枝,大津山堅介,ピニェイロアベウ,苫米地毅大:令和6年能登半島地震の輪島市朝市通り付近における市街地火災の建物被害調査と焼け止まり状況の分析,自然災害科学, Vol.43,No.3,2024.
5) ピニェイロ アベウ タイチ コンノ,令和6年能登半島地震において発生した火災現場のドローン調査報告,日本火災学会 火災誌, Vol. 74, No.4, pp.37-42, 2024