多発する林野火災

 日本では近年、岩手県大船渡市で約3,000ヘクタール超が焼失した大規模火災(2025年2月に発生)など、深刻な林野火災の事例が相次いでいます。一度燃え始めると広範囲に延焼する林野火災が増え、被害の大きさが問題となっています。少雨に伴う極度の乾燥が背景にあり,これは気候変動に伴う気象の極端化により引き起こされているという指摘もあります。

 こうした状況を受け、2026年1月から全国の多くの市町村で「林野火災注意報」と「林野火災警報」を発令する新しい仕組みの運用が始まりました。大船渡市の大規模林野火災を契機に、消防庁・林野庁の検討会で制度化されたもので、1~5月の林野火災が多発しやすい時期に、市町村長が気象条件に応じて発令します。多くの自治体では、前3日間降水量1 mm以下かつ前30日間30 mm以下といった少雨・乾燥条件に、乾燥注意報や強風注意報の有無を組み合わせて注意報・警報を出す基準としています。

 林野火災注意報は「注意が必要な状態」を知らせるもので、この期間は屋外での火の使用を控えるよう「努力義務」が求められます。一方、林野火災警報は「非常に危険な状態」を示し、火の使用制限が「義務」となり、従わない場合は罰則の対象となる場合もあります。これらの情報は、市町村のホームページや防災行政無線、メール配信サービス、SNS、防災アプリなどで広く周知されます。

 日本の林野火災の多くは、人為的な原因で発生します。原因が判明している林野火災の中で最も多いのは「たき火」で、次いで「火入れ」「放火・放火の疑い」「たばこ」など、人間の行動に起因するものが大半を占めます。消防庁も、山火事は人的要因が多い「防げる災害」であり、新たに導入された林野火災注意報・警報を通じて、一人ひとりの防火意識が高まることを期待するとしています。

 私たちが日常生活で気を付けるべき点は、決して難しいものではありません。たき火やバーベキューなどは許可された場所で行い、その場を離れる前に水や土で完全に消火し、火種が残っていないかを丁寧に確認することが重要です。乾燥注意報や林野火災注意報・警報が出ているとき、あるいは風の強い日は、屋外での火気使用や野焼きを控えるなどの判断が求められます。火気を使用する行事を計画する場合は、延期の可能性をあらかじめ考えることも必要です。たばこのポイ捨ては絶対に行わず、携帯灰皿などを利用して確実に火を消してから捨てましょう。

 林野火災は、一人の「これくらいなら大丈夫」という油断から、尊い命や住宅、森林を失う結果につながりかねません。しかし、逆に言えば、私たちが注意することで防ぐことができる災害でもあります。

 

参考リンク

・総務省消防庁「林野火災への備え」
 https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/rinyakasai/sonae.html

・東京消防庁「林野火災警報等の運用開始について」
 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/kouhyou/portal/fire_warning01.html

・林野庁「山火事の直接的な原因にはどのようなものがあるの?」
 https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/yamakaji/con_3.htm

 

2026年4月17日 公益社団法人 日本火災学会(文責:桑名一徳)