2026年7月 令和8年熊本地震による地震火災等の発生と事前の備えの再考
2026年7月28日16時27分頃に熊本県を中心としたM7.1(暫定値)の大規模地震が発生しました(令和8年熊本地震)1)。この地震に関連してお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。日本火災学会では、地震火災等による被害をなくしていくために必要な事前の備えをお伝えするとともに、被災実態の調査をすすめて今後の対策に寄与してまいりたいと存じます。
今回の地震では、熊本県宇城市・氷川町で震度7を観測し、現在のところ建物・構造物被害やライフライン被害のみならず11件の地震火災(7月30日時点)も報告されています2)。
一方、これまでの火災学会の調査では、2016年に発生した平成28年熊本地震においても18件の地震火災が発生しており、そのうち11件が前震の2日後に発生した本震によるものと判明しています3)。大規模地震時には、電気器具や分電盤等、ガス設備の損傷、火気器具や調理中の出火など、さまざまな要因で火災等が発生します。また、強い揺れの直後のみならず、停電からの復旧に伴って出火する「通電火災」は、地震後も断続的に発生するおそれがあり、これも合わせて注意が必要です。今回の地震では、大型商業施設での建物の一部崩落の起因となる爆発現象も発生してしまいました。平成28年熊本地震のように、今後も大きな地震が後発する可能性がありますが、その際には強い揺れによる火災が発生する可能性があり、その結果、2024年能登半島地震のように、火災が延焼拡大して大規模市街地火災となることも危惧されます。これらの被害を軽減するためには、地震による出火防止や迅速な火災の覚知による初期消火、そして万一の際に安全な避難行動ができるように再度考えておくことが重要です。皆様方にはいまいちど個人や地域内、事業所内で以下の地震火災対策をご確認ください。
<出火防止への備え>
- 不要な電気器具の使用を控え、コンセントのプラグを抜く。
- 火気器具の転倒防止措置を確認し、火気器具の周囲や上部にある可燃物を除去する。
- 燃料タンクやプロパンガスボンベ等を固定したり落下物から防護するなどにより、これらの設備の損傷を防止し、危険物が漏洩しないように管理を徹底する。
- 感震ブレーカーを設置している場合は、正常に作動、もしくは正しく設置されていることを確認する。設置していない場合は、設置を検討する。
<特に停電が発生している地域に対する留意事項>
- 停電後、避難等により自宅を離れるときはブレーカーを落とす。自宅にいるときでも、電気配線の損傷等、自宅に被害がないことが確認されるまでは、念のため電気器具のスイッチを切り、コンセントを抜く。
- 給電が再開されるとき、ブレーカーを戻すときは周囲や室内を確認する(※1)。異常発見時は電力会社に通報する。
- ロウソクやツナ缶ランプなどの裸火の使用をできる限り控える(※2)。
※1:具体的には、「電気機器やコードが濡れたり損傷していないか」「燃えやすいものが出火源近辺に移動してないか」「電線、引き込み線、配線器具の破断やガス漏れがないか」「万一の際に消火器などで迅速な消火ができるか」等を確認してからブレーカーを戻す。
※2:停電時にロウソクを用いることで、後発地震で転倒するなどして火災が発生し、場合によっては命を落とすケースがこれまでの地震で報告されている。
<初期対応の備え>
- 火災警報器の電池切れがないことを確認し、火災覚知による迅速な初期消火ができるようにしておく。
- 消火器の場所を確認し、取り出しやすい場所に置く。また、初期消火体制をもう一度確認するなど個人や家族、地域、事業所等において地震が突発的に発生しても初期消火ができるようにする。
<避難対応等の確認>
- 安全な避難場所や避難経路の確認をする。事業所等では避難誘導ルールの確認も行う。
- 避難した後、強い揺れを受けた建物内に再度入る際は、耐震性能のみならず、スプリンクラー・防火設備の損傷など火災安全性能や危険物の漏洩なども含めた安全確認を徹底する。
参考文献
1) 気象庁:「令和8年熊本地震」について(第4報),2026.7.29.
2) 総務省消防庁:令和8年熊本地震による被害及び消防機関等の対応状況(第20報),2026.7.30.
3) 廣井悠,岩見達也,髙梨成子,樋本圭佑,北後明彦:2016年熊本地震に伴って発生した地震火災に関する調査,火災学会論文集,Vol.70, No.1, pp.27-33, 2020.
2026年7月30日 日本火災学会地震火災専門委員会